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ブリュッセル便りBACK NUMBER/16〜23

VOL 23
最終回◆「年齢を重ねるぶんだけ成長していきたい」
VOL 22
チャップリンの自宅でコンサートを開いたこともある恩師と、
長野で楽しくバッハを演奏
VOL 21 あまりの気温差についにダウン!◆ がんばれ! 礒 絵里子!
VOL 20 梅雨真っただ中の日本◆雨にも負けず、演奏会に大忙しの日々!
VOL 19 南国宮崎でモバイラー宣言!◆充実した2週間で人生観も変わる!?
VOL 18 久々にブリュッセルから到着◆同居にネットにフル稼働の毎日
VOL 17 デジタルカルチャーショック!!◆異国&異業種間の大きなギャップ
VOL 16 日本地方巡業で音楽=天職を実感! ◆そしてVIVA!ホームページ開設
   
VOL16 日本地方巡業で音楽=天職を実感! そしてVIVA!ホームページ開設
 

3月3日(金曜日)

日本に一時帰国して、あっという間に10日あまり過ぎました。成田に降り立ったら、寒いこと寒いこと。驚きました。ブリュッセルのほうが絶対寒いものと思って、日本用薄着をして来てしまったので、辛かったです。いろいろあるのでしょうかね、世界気象も。ひと月ぶりの日本ですが、相変わらず時差が辛い。ヨーロッパに行ったときはOKなのですがねぇ。いつもの私と違って、「超」がつく早寝早起き!早起きは得をするはずなのですが、このところすでに花粉の飛翔が始まっているのか、鼻がグスグスしてきて、二重苦となっております。

2月24日に室内楽のコンサートがあったので、リハーサル前の時間があるうちにと思って、成田から直行で、いつも行く原宿の美容室へ。春らしいウェービーヘアにしてみました。室内楽のコンサートでは「世紀末と黎明の室内楽」と銘打って、シュニトケという作曲家を取り上げました。現代曲というと、わかりにくいという方が多いですね。シュニトケは1998年に亡くなり、まさに現代曲の作曲家と言えますが、前衛的であると同時に、今流行の癒し系の要素もある作曲家です。興味のある方はAOLで検索してみてください。当夜はまさに世紀末と21世紀の黎明を迎えるにふさわしい音楽会でした。

その後は、富山と新潟でのコンサートで、久々の北陸への旅。ヨーロッパ内であちこち移動して旅慣れてきたとは思っていましたが、日本の地方への旅は、何か忘れていた日本の心を再び思い出させてくれるような気がしました。新潟の日本酒がおいしかったからというわけではありませんが・・・・・・。今朝の始発の新幹線で、東京に戻ってくる道中も、車窓からの雪景色は、ヨーロッパで感動した景色とはまた違った、心揺さぶられる感慨がありました。新潟といえば最近不快な事件が起きたばかりですが、そこにリンクしたさまざまな問題を思うとき、音楽が荒廃した、あるいは疲れた心を癒すということに、改めて行き当たりました。昨今起こるいろいろな後味の悪い事件も、世紀末に我々がどんな方向に行くべきなのかを模索していることと関連があるのでしょうか。こんな世の中だからこそ、我々音楽家が、心のこもった演奏をすることに、大きな意味があるような気がして、この仕事を選んで良かったなと痛感した旅でした。

さて、世紀末である2000年のNew Years Resolutionをホームページの開設と宣言した私でしたが、全然はかどらず、自分で開設するのは世紀末には無理かもと弱気になっていたところ、ずっと応援してくださっているファンの方からオフィシャルホームページの開設の申し出がありました。渡りに船と言ってはなんですが、この際、お願いしてしまわないと、21世紀になっても実現しないかもと思い快諾。4月には開設できるようになるそうなので、この号が出てしばらくしたころにはアクセス可能だと思います。ぜひ、覗いてみてくださいね。私もできるかぎり協力して、より魅力あるホームページになればと思います。
Home PCのご協力も得て、ブリュッセル便りも載せていただけたらうれしいなと思っています。読者のみなさまも、何かご意見・ご提案がありましたら、ホームページのメール宛にお知らせください。 URLは追ってお知らせします。
それではまた。

礒絵里子

 

VOL17 デジタルカルチャーショック!!◆異国&異業種間の大きなギャップ
 


2月に帰国してから、数回の演奏会を終え、あと2回のコンサートが終わったらブリュッセルに戻ります。クシャミと共に目覚める花粉症の日々も終わりに近づき(?)、春らんまんの桜で、そこかしこが今年の流行色に染まる季節です。家の庭の桜も、愛らしいつぼみがふっくらし始めて、もう少しでほころんでくる様子。久々に日本の春を満喫しています。

お花見といえば、宴会での大騒ぎが基本のようですが、抹茶に和菓子も似合いますよね。このところ、和菓子に凝ってしまって、この繊細な美しさと、まったりとした舌に優しい感触はあなどれないぞという気がします。ブリュッセルにも売っていますがやはり品が違うので、日本にいる間にたっぷり食べておこうと思っています。
ブリュッセルの友達と毎日のようにAOLでメールを交換していますが、向こうは今、復活祭の休暇中で、肌寒いとはいえ、ショッピング街のカラフルな飾り付けに、春の予感は充分に感じている様子です。私の好きな白アスパラ等の春野菜も、そろそろ出まわる頃なので、ブリュッセルに戻ったらスーパーに行くのが楽しみ!

さて、先月号で礒絵里子的ネットライフは一気に拡大!?と書いて頂きましたが、なかなか道は遠いのでした。ついに、小型軽量モバイルWindowsCEを買ったのは良いのですが、一気に拡大するまでには、様々な問題をクリアしなければならないことが分かりました。やはり研究が中途半端だったのが原因ではあるのですが、買ったモバイルの接続の仕方がわからない…・しかも初期設定で接続できるプロバイダが限られているんです。皆さん、ご存知でしたか?私は知りませんでした。
さらに、携帯電話とつなげてネットライフを楽しもうと思ったのに、オンラインサインアップできないので携帯の説明書を読んでみたら、PCカード(パソコン用カード型周辺機器)なるものが必要とのこと。皆さんご存知でしたか?私はまたまた知りませんでした。てっきりそのままでつながるものと・…。そしていまだPCカードを手に入れてないので、まだモバイラーに変身できていないのです。本当は変身した姿を皆様にご報告する予定だったのに・・…。

担当の編集さんも原稿締め切りを少し延ばしてくれたのに・…・今は家で電話線につないでいます。でもそれでは意味がない・・…。しかしモバイルと同時にデジカメを購入したので今はそれで遊んでいます。そのデジカメは、前に持っていたものと違って、軽量、しかもスタイリッシュ!やっぱり日本って凄い。もうすぐ満開になる桜を写して、留学している友達に送ってあげようかと思っています。ブリュッセルに戻ったら町並みを撮って皆さんにもお見せしたいです。お楽しみに!

先日、新装成ったディジット(HomePC編集部)にお邪魔しました。前よりかなり広いフロアにたくさんの方々が忙しそうに働いていて、映画やドラマで見る世界のようでした。異業種間の相互訪問ってかなりインスピレーションを受けるものですね。私のコンサートにきてくださった編集部の方もそのように感じてくださっていたらよいのですが・・
次回は本当にブリュッセルからブリュッセル便りを送信しますね。それではまた。

礒 絵里子

 

VOL18 久々にブリュッセルから到着◆同居にネットにフル稼働の毎日
 

5月3日(水曜日)

みなさんこんにちは。
今回はブリュッセルからのブリュッセル便りです。
先日、日本から久々に戻ってきたときは「お、よっぽど日本より暖かいじゃないの」というくらいポカポカ陽気だったのですが、そのままずっと良い天気が続くわけもなく、最近は再び薄手のコートが活躍中です。この原稿を書いているころは、日本はまさにゴールデンウィークの真っ只中なのですが、こちらにはそのような素晴らしいものはありません。さすがに5月1日はメーデーでお休みだったので、日、月曜日と連休ではあったのですが・・・・・・。でもこちらは休みの日は見事にお店も休んでしまうのでショッピングはできないし、みなさんどのように過ごしているんでしょうね。“休み”の日はやはり“家でゴロゴロ休んで”いるのでしょうか!?

じつは私、5月より同居生活が始まりました。悲しいかな(?)、相手は女の子です。彼女のフラット(1部屋のアパートのこと)の大家さんが、急に変わることになり、新大家さんから彼女のところに「内装工事をするので、4月末日で出ていってください」という手紙がきたのが1月末のこと。「突然言われても・・・・・・」と抗議したいところですが、3カ月前の告知ということで、法律上は問題なし!なす術もなく彼女は、新しいアパートを探そうとしていたのですが、私の家はけっこう広いし2部屋あって練習も問題なくできるので、一緒に住むことに落ち着きました。

“二人暮し”というのは私は生まれて初めての経験なのですが、今のところ楽しく暮らしています。もともと気の合う友だちだ、ということももちろんあるのでしょうけど、ご飯を食べるのも2人の方が楽しいし、なぜか練習量も2人になってからのほうが増えている!?
これは意外でした。早起きにもなったし。まあ時差ボケがまだ残っているという噂もありますが・・・・・・。役割分担もいちいち確認するわけでもないのに、いつのまにか決まっていたりします。ちなみに料理を作るのは私、後片付けは彼女。私は料理大好きなんですが、お皿を洗うのが嫌いなんです。でも彼女は逆。なかなかうまくできてますよね?

ところで、今は去年も書きましたが、白アスパラの季節です。こちらに来て白アスパラファンになった私にとってはうれしい季節です。先日もその同居人と白アスパラを買ってきてさっそく堪能しました。あの苦みが何とも言えず美味しい・・・・・・。その子も私と一緒で、「食べるのが大好き!」という人なので(だから気が合うのでしょうか?)、なかなかグルメな生活をしています。と同時にダイエットもしたいという贅沢な、というか無謀な悩みを2人して抱えています。

一昨日、同居生活開始を記念して近所の美味しいレストランにムール貝を食べに行ったのですが、もうシーズンオフになってしまったらしく、置いていませんでした。ショック・・・・・・。「ムール貝ならそんなにカロリーもないし」と2人で言い訳しつつ行ったのに。けっきょく《Menu du Chef》を取ってしまい、牡蠣(はよいとして)、お魚のバターソース(これはどう考えてもよくなさそう)をいただいてしまいました。おまけにデザート付きでした。「明日からダイエットね!」と毎日確認しあってます。いったいいつから始まるんでしょうね。私が今度帰国するまでに始まるのでしょうか?請うご期待!

そう、また5月半ばに日本に戻る私。そしてこの号が出るころにもまだ滞在しているでしょう・・・・・・。5月は《宮崎国際室内楽音楽祭》に参加します。世界の一流ソリストたちが集まる音楽祭で、今からとても楽しみです。そして6月13日(火)に東京の紀尾井ホールでリサイタルがあります。
今回のピアニストは去年のマリアカナルスコンクールのデュオ部門で3位になったときにコンビを組んだ人です。彼女は今パリにいて、日本に戻る前に合わせをしに行きます。と言っても、日帰り強行軍。でもここから高速列車タリスに乗って1時間半でパリなので、日本の私の実家(神奈川)から東京に行くようなものですかね
。と言いつつパリ行きをじつは楽しみにしている私。
またいろいろ宣伝をしちゃいましたが、宣伝ついでにもうひとつ。私のホームページもいよいよ始まりました。私が伝えたイメージをとても素敵に再現してくださった管理人さんに感謝!みなさんよかったら見てください。URLは、http://www.sanyo.ne.jp/mbr/eriko/index.htmlです。そのうち検索エンジンにも載ると思いますので。
それでは次回は日本から、かな?

礒 絵里

 

VOL19 南国宮崎でモバイラー宣言!◆充実した2週間で人生観も変わる!?
 

6月5日(月曜日)

ブリュッセルから戻って南国宮崎へ!帰国した翌日から、宮崎で行われた第5回宮崎国際室内音楽祭に参加してきました。この音楽祭は、元NHK交響楽団コンサートマスターの徳永二男先生によるプロデュースで、世界的なヴァイオリニストである、アイザック・スターン氏を筆頭に、内外の素晴らしい音楽家が一堂に会して作り上げる音楽祭です。2週間近く、みんなで良い音楽祭にしようと盛り上がったので、本当に楽しい日々でした。

ブリュッセルでは普段、孤独に練習をして、レッスンに持っていくというのがパターンですが、宮崎で過ごしたこの2週間は、共同作業が多く、連帯感と音楽仲間の愛情を感じ、音楽する喜びを満喫しました。
もちろん満喫したのは音楽ばかりではありません。いつものように、美味探求も私の旅先でのテーマ。おろそかにはしません!宮崎地鶏、宮崎牛、新鮮なお寿司、日向夏などなど堪能しましたが、極めつきは完熟マンゴー!このおいしさには脱帽しました。甘さが完璧なのです。「ここまで甘くていいのか」状態。一度食べてみてください。

ほかにはホテルのプールも満喫しました。ブルーの色合いについつい惹き込まれ、半年以上ぶりに泳いだら、風邪を引いてしまうハプニングも。また演奏会後のレセプションあるいは飲み会も多く、東京に戻ったら、紀尾井ホールでの大切なリサイタルがあるので、しっかり練習しなければと譜面もたくさん持っていったのですが、ほとんど開かれることはありませんでした!?やはり誘惑には勝てませんね。いろいろ満喫して充実の日々でした。

この音楽祭には第1回、第2回そして今回の第5回と参加していますが、いつも宮崎の皆様からの温かい歓迎に感謝します。地元の音楽祭を大切に育てようという気持ちが、良い音楽祭を続ける原動力になっているような気がします。
今年は第5回という節目でもあり、サントリーホールでの東京公演もありました。アイザック・スターン氏が80歳になられるということで、アンコールの前にバースデーケーキが舞台に運ばれ、みんなで「ハッピーバースデー」を合奏しました。80歳とは思えない、力強い素敵な演奏を聞かせてくださったスターン氏に拍手喝采。今から50数年先を目標に私も頑張らなくては!と心の奥で密かに決意を固めた(!?)のでした。

ところで、この宮崎行きで、私のモバイル大作戦は相当進化しました。「モバイルカードP-in」を購入し、家から羽田に向かう途中悪戦苦闘しながら設定。東京を発つ前になんとか設定を完了し、飛行場から実家にメールを送信!宮崎着後、実家に確認の電話を入れたら、ちゃんと受信できているとのこと。これで私も正真正銘モバイラーだ!!とウキウキです。この軽さは本当にうれしい。今度ブリュッセルに戻るときは、あの重いパソコンを抱えていかなくていいなんて。もう軽々と旅行ができる。なんで、もっと早く始めなかったのかしら、etc.etc。しかも「モバイルカードP-in」はPHSなので、インターネットも速い速度で可能です。携帯電話にも接続できるので、その場所場所で、電波が良いほうを選べるというわけ。どうだ!って威張るほどのことでもありませんね。多分みなさんのほうが、もっと前からご存じでしょう。ただ、あまりに感激したもので・・・・・・。

7月7日まで、またいくつかのコンサートをこなしてブリュッセルに戻りますので、そのときには強〜い味方になりそう。最初は小さい字とタイプに馴染めなかったのですが、そのうち慣れるだろうし。画面も思ったよりずっときれいだし。コンピュータ技術の進歩は本当にすごいですね。自分自身も負けずに進歩しなければ・・・・・・。といろいろ考えさせられた2週間でした。
それではまた。

礒 絵里子

VOL20 梅雨真っただ中の日本◆雨にも負けず、演奏会に大忙しの日々!
 

7月4日(火曜日)

雨、雨、雨が続いて、梅雨の日本ってこんなだったかなあと思っていましたが、梅雨の晴れ間はこれまた一挙に暑い!四季を完璧に感じることができる日本は、やはり素晴らしいなと思います。

6月13日、紀尾井ホールでのリサイタルの日も思いっきり雨。そんななか、たくさんのお客様がいらしてくださり、Home PC 編集部の皆様にも聴いていただけて幸せでした。リハーサルのときは空調のおかげでホール内はかなりカラッとしていたのですが、お客様の入場とともに湿気がグーンと上がってしまいました。ヴァイオリンは湿気に敏感なので、1曲目を弾き始めたら、音の鳴りがさっきと違うぞとちょっと焦ってしまいましたが、だんだん空調も効いてきて、気持ち良く演奏することができました。

ステージではいつも一期一会のお客様に最高の状態で聴いていただきたいとは思っているのですが、これで良い、完璧、ということはありません。いろいろ反省点も出てきますが、根が楽観的なので、「次またがんばっていこう!モード」に切り替わってしまいます。ご注意と賞賛の両方を、いろいろな方々からいただいて、実りある演奏会でした。

その後8月にやるオーケストラとの合わせのために鹿児島に行ってきました。あいにくの雨、それも局地的豪雨で、楽しみにしていた桜島も何もかも雲に隠れて見えませんでしたが、ホテルにある温泉には入れたし、オケのメンバーの温かさに心は晴れやかでした。
グルメを自認する私にとって、鹿児島の食いしん坊万歳作戦はカットできない部分ですが、それも次回8月に行ったときのお楽しみにとっておきます。
もともとアルコールに弱い私ですが、日本にいると飲み会が多くて、少し強くなったような気が・・・・・・。良いことなんだか、悪いことなんだか・・・・・・。でも、私の場合は食事をおいしくする程度の酒量なので、まぁ問題はないかと思いますが。そう思っているのは自分だけ?

その後2つの本番を終え、7月7日に七夕コンサートと銘打った演奏会があり、これが終わったら翌日ブリュッセルに戻ります。でも、その後すぐにオランダでリサイタルがあるため、翌々日にはブリュッセルから移動しなければならないので、キツそう。ブリュッセルに戻るときには、例の軽量パソコンを携帯して行くので、それも楽しみ。どこへでも持って行って通信する予定ですが、海外での設定がうまくできるかとちょっと心配。
でも、1年9カ月前の初心者のころに比べれば、だいぶ、わかってきてはいるはずだからなんとかなるでしょう。移動のたびに、疲れていた私の肩も、もう大丈夫です。今使っているノートPCとモバイルを“なんちゃらケーブル”で接続するとAOLがモバイルでも使える、という情報を入手したので、試そうと思っているのですが今度帰るまでに間に合うかどうか・・・・・・。

AOLのメールソフトは使いやすいし、ファイルもたくさん入っているので、ブリュッセルに戻る前に、なんとか、AOLが使えるようにしようと思っています。なんといっても、“AOLで届くブリュッセル便り”ですからね。
次回はブリュッセルからの便り・・・・・・かな?
それではまた。

礒 絵里子

VOL21 あまりの気温差についにダウン!◆ がんばれ! 礒 絵里子!
 

暑い日本と涼しいブリュッセルの気温差で、すっかり体調を崩してしまった礒さん。それでも演奏会を無事終えたのはさすがプロ!日本で療養したために、ブリュッセル滞在をあまり満喫できなかったようですが、“食”に関しては自称グルメを誇る礒さんらしく、しっかり堪能。その後日本で、音楽家にとって大切な耳を病んでしまって、病院通いの日々。音楽家、礒絵里子の運命やいかに・・・・・・。

8月7日(月曜日)

一年に一度、天の川でひこ星と織姫星が出会えるはずの七夕の日。天の川どころか、台風の影響で大雨!強い風と雨でふたりの淡い恋物語もはかなく消えてしまったのではないでしょうか。このところ演奏会のたびに雨、雨、雨。やはり私って雨女?と自問自答したくなるものの、6月梅雨時の日本では誰もが雨男、雨女になりがち・・・・・・、と自分を慰めました。迎えた七夕コンサートと銘打っての演奏会では、大雨のなかたくさんのお客様がいらしてくださり、感激しました。

コンサートの翌日には日本を発ってブリュッセルへ。毎度のことながら、夜を徹して荷造りをし、一睡もせず成田を発ちました。いつも飛行機内であまり眠れないのですが、さすがに今回は、食事もとらずに爆睡!スチュワーデスさんにも「ずっとお休みでしたけど大丈夫ですか?」と言われてしまいました。ブリュッセルに戻ったら、あれ?今は冬?と勘違いしそうな、日本の気候を2〜3カ月逆戻りした気候で、コートを手放せない状況。ヨーロッパの夏は、3〜4日真夏の暑さを感じることがあっても、日本と違って湿気がなく、とても過ごしやすいのですが、それにしても、この寒さはちょっと異常。今は7月。5月には30度を超える暑さが続いていたらしいので、もう夏は終り?なのでしょうか。日本からタンクトップやら夏用の洋服を持ってきた私はまぬけ?
ブリュッセル到着の翌日に、コンサート&講習会のためオランダへ。なんと、コンサート当日の朝に熱を出してしまい、うわーどうしよう・・・・・・。演奏するのは夜10時前くらいからなので、とにかく体力を温存することに。夕方まで寝て、無理やりご飯を食べ、コンサート会場に行って楽屋で待機。待っている間になんとかテンションを上げて、本番は乗り切りました。

演奏が終わると、お客様が立ち上がって拍手をしてくださったので、すっかり元気になりました、と言いたいところですが、そううまくはいかず、その後3日ほど、ベッドで寝てばかりいました。2週間ほど日本に滞在し、ブリュッセルに戻るころにはようやく元気になりほっとしたのでしたが、休む間もなくまた日本に帰国。帰国前、束の間のブリュッセル滞在中に、家の近くのイタリアンレストランに友人たちと出かけました。私は大好きなムール貝のスパゲッティを頼みました。そう、ムールが解禁になったのです!春から初夏にかけて、ムールに菌がいて食べるのは危険なので、レストランからムールのメニューはなくなってしまっていたのです。ムール好きの私には辛い日々・・・・・・。やっと頼んだ念願のムールスパゲッティは、お皿の縁に沿って大胆にムールが盛られ、その真ん中にペペロンチーニがのっていて激うまでした!私の体力もドアップしたに違いない!と意気揚々で日本に戻りました。

しかし、暑い!!ですね。日本の夏って。一昨年、昨年と日本の夏を体験しなかったので、日本の夏の暑さを忘れていました。とりあえず髪の毛をショートカットにして暑さをしのごうと美容院へ行ったのですが、そのあたりから、再びどーっと熱が出てダウン。どうしたの?私の体力は。一日十数時間の睡眠をとっても疲れがとれないなぁと思っていたら、完璧な夏風邪をひいていました。喉、鼻ときて、極めつけは耳。ちょっと痛いなぁと思っていたら、なんと中耳炎でした。「気圧が変わるから飛行機はよくないですね」と、お医者様に言われてしまいました。え?10日後には鹿児島での演奏会があって、飛行機に乗るんですけど・・・・・・。なんとかなりませんか?という私のお願いに、耳鼻科の先生もなんとかしましょう、ということで、毎日治療をしてもらっています。音楽家にとって耳はとても大切。これからは、健康に十分注意しなければと大いに自覚した7月でした。順調に治りつつある風邪と中耳炎ですが、皆様も夏の疲労回復はお早めに。
それではまた。

礒 絵里子

VOL22  チャップリンの自宅でコンサートを開いたこともある恩師と、
長野で楽しくバッハを演奏
 

9月7日(木曜日)

9月に入っても暑さの勢い衰えず、と思っていたらやっと涼しくなってきました。食欲の秋ももう間近ですね。とまたしても食べ物の話かとお思いでしょうか。違います。8月はいろいろなことがあったのです。
先月号でお話しした私の風邪は、快方に向かい、無事鹿児島行きの飛行機に乗りました。知り合いのパイロットさんに「離着陸時に飴をなめたり、耳抜きしたら耳に負担がかからないのではないか」とアドバイスをいただいたものの、乗ってすぐ爆睡して、何の異変も感じることなく鹿児島に着いたのでした。お盆真っただ中の鹿児島は日差しがきつくて、南国!!という印象。6月に来たときは嵐の洗礼を受けたので、まったく違う面が見られてラッキー?今回は桜島もバッチリ見えました。今回共演したKTS室内オーケストラの皆さんは、団の雰囲気がとても温かいし、なにより音楽に対する真摯な姿勢が素晴らしいと思いました。唯一残念だったのは、観光する時間がまったくなかったこと。今度はぜひゆっくり訪れたいものです。

鹿児島から実家の鎌倉に帰ってきたその日の夜には長野県の上田に移動。今度は私の恩師、オイストラフ先生が教えにこられる音楽フェスタに参加するのです。
ちょうどお盆の時期だったので、「車で長野に行く」と話すとみんなに「やめたほうがいいんじゃない?何時間かかるかわからないよ」と言われました。ところがどっこい、鹿児島から帰ってきてひと寝入りしてから出かけようと、お昼寝をして起きたら夕方6時過ぎ。「あーもう何時に着くかわからない!!」とパニクっていても仕方がないので、出発すると、意外に空いていて、3時間ちょっとでホテルに着いてしまいました。案ずるより生むがやすし、の格言が頭をよぎったのでした。


久しぶりにお会いした先生はお元気そうで、長旅の疲れも見せず精力的にレッスンなさっていました。
先生はお寿司が大好物で、宿泊していたホテルにおいしいお寿司屋さんがあり、毎日のようにそこに食べに行っていました。私もお寿司は大好物ですが、毎日はちょっときつい・・・・・・と思っていましたが、実際はそんなことはありませんでした。先生はジョーク好きなうえにやはり今までにいろいろな経験をなさっているので、そのお話を伺えてとてもラッキー。
スイスのルツェルンで毎夏行われている音楽祭で演奏会をしたときに、スイスに住んでいたチャップリンの自宅に招待され、チャップリンファミリーのためにホームコンサートをした話などを、お寿司をつまみながら伺いました。

フェスタでは5日間に3回レッスンを受けて(久しぶり!)最後のコンサートでなんと先生とバッハの“2つのバイオリンのためのコンチェルト”を演奏しました。先生と共演なんて、と非常に緊張してしまいましたが、先生のオーラに感化されて本番は楽しく演奏できました。
そのコンサートをブリュッセルのルームメイトが聴きに来てくれました。はるばるドイツから・・・・・・。というのは冗談ですが、ちょうどその時期彼女は日本を訪れていたので、お母さんの実家、名古屋から来てくれたのです。そのあと2人で私の実家に帰り、思いっきり気分を解放して遊んでしまいました。ショッピングに行き、ヨットに乗り、プリクラを撮る。プリクラなんて何年ぶりか・・・・・・。その進歩ぶり(照明とかカメラアングル、背景にいろいろ書ける、など)に驚きました。日本ってすごいなあ。

楽しい時間はあっという間に過ぎて、また次のコンサートに向けて練習の日々を過ごしています。8日にコンサートが終わったら13日にブリュッセルに戻ります。そして17日にもコンサート。来月はブリュッセルからのブリュッセル便り、しかも感動の最終回!!をお送りします。

礒 絵里子

 

VOL23  最終回◆「年齢を重ねるぶんだけ成長していきたい」
 

この1年というもの、日本とヨーロッパの間を行ったり来たりで大忙しだった礒さん。専門の音楽の話だけでなく、生活に潤いと彩りを与えてくれる食べ物の話をたくさん伝えてくれました。その連載も、今回がとうとう最終回。今後、礒さんの近況を本誌でお伝えできないのはさびしいかぎりですが、来年の夏には5年間の音楽留学を終え、日本での演奏活動に重点を置かれるとのこと。さらなる活躍を期待したいものです。

10月5日(木曜日)
今回でこの連載もいよいよ最終回を迎えました。思えば1998年10月19日は、第1回「礒絵里子のブリュッセル便り」をAOLで送信した記念すべき日です。いつの間にか2年の月日が過ぎていたのですね。その年の9月に一時帰国したおりに、ディジットご提供の2日間集中パソコン教室に参加したのがご縁でAOLで編集部にメールを送る特派員に抜擢(!?)されたのでした。月1回の送信ですが、案外あっという間に締め切りはやってきて、巷に伝えられる“作家の恐怖”というものを、私も少々実体験したような気がします。すみませーん!あと1日待ってくださーい!というメールを何度か出しては、担当の編集さんにご迷惑をおかけしました(じつは今回も・・・・・・)。いつも温かく見守ってくださって、本当にありがとう!!
今バックナンバーを読み返してみると、その時々の出来事が走馬灯のようによみがえり、なんだか胸が一杯になります。

1998年10月からの1年は日本に帰国しませんでしたので、ブリュッセルとヨーロッパの見聞をいろいろ書くことができました。最初は1年の予定でしたが、好評につき(かどうかは知りませんが)、今回までの連載となりました。2年目は日本とヨーロッパの往復で、日欧の文化の違いや相似について、言及できたのでは?と思いましたが、どう考えても1番多いのは食べ物の話。ほぼ毎回食について書いている私は、単なる食いしん坊バンザイ人間なのでしょうか。いいえ、そうではありません。人の一生を彩るものはさまざまありますが、音楽も食文化もその大事なファクターであるのは確かなことだと思います。そして、食文化と音楽には共通点がたくさんあります。
たとえば、食も音楽も爛熟した宮廷文化から、さらに高みに昇華されていったものなのです。フランスのアンリ2世とメディチ家のカトリーヌとの結婚により、当時の先進国イタリアからもたらされた洗練された料理は、フランス料理の隆盛のもととなりました。また、オペラの父といわれるモンテヴェルディーに始まるイタリアオペラは、マントヴァ公などの貴族に庇護され、ドイツオペラに多大な影響を与えるようになりました。音楽と食文化が人々にもたらす幸福と同様、この連載が私にもたらしてくれたものは、有形無形たくさんあります。ブラインドタッチが速くなった、モバイラーになった、物事の観察眼が養われた、いろいろなことを思索する時間をもたらした、(ビールの研究で)酒飲みになった!そしてなによりも、お会いしたことのない読者の皆様を本の向こうに感じるように・・・・・・。

この2年という月日は長いような短いような。しかし確実に2歳年をとったことは厳然たる事実。AOLはさらにバージョンアップしてますし、ディジットはI-cupidに続いて、Wedding雑誌を創刊、ナスダックへの上場もはたし、いよいよ快進撃です。私もあやかって、どうか毎年、年の数だけ成長していけますように!今は、もうすぐブリュッセルで開催されるフレミッシュ放送交響楽団との共演に向けて練習に励んでいます。そして、来年夏には5年間のベルギー留学を終了して帰国し、日本での演奏活動を重点に頑張っていくつもりです。これからも、礒絵里子をどうぞよろしく!たまにはホームページも覗いてみてくださいね。また何かの形で読者の皆様にお会いする機会があるようにと祈りつつ筆を置きます・・・・・・、じゃなくてタイピングを終了します。
そうそう、嬉野統轄編集長殿、いつかのご飯に連れて行ってくださる約束、忘れてませんか?12月には一時帰国しますので、よろしくお願いしまーす。それでは皆様どうぞお元気で、さようなら!!そして2年間本当にありがとうございました!

ホームピーシーに連載していたブリュッセル便りは今回で最終回となりま したが、 ホームページでこれからも月に1回様々なトピックについてお便りを続け ていきますので、 今後も読んでくださいね。

礒 絵里子