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ブリュッセル便りBACK NUMBER/1〜5

VOL 5 春の訪れを告げる“パック”休暇にベルギービールでちょっと息抜き
VOL 4 演奏の機会が多くなる春パソコンの勉強が
VOL 3 “何でもふたつ”のブリュッセルでは「You've got Mail」の字幕も!
VOL 2 パソコンを始めたパリの友人もナント・・・
VOL 1 新しい家でのヴァイオリンの響きはGood!です
   
VOL1  第1回 新しい家でのヴァイオリンの響きはGood!です
 

10月19日(月曜日)

お元気ですか?私は、無事引越しを完了しました。ちょっとグロッキー状態です。でも新しいおうちは、古くて天井も高く、ヴァイオリンの響きも最高にグッド!!ヨーロッパにいることを実感しています。ところで、AOLにはりきって接続を開始したのですが、なかなかうまくアクセスできず、一時は電話で問い合わせをしなくてはならないかとあせってしまいました。でも、AOLnetをAOLGrobalnetにしたら、無事に接続できました。
引越しのドタバタと来週のオランダでのリサイタルのための練習とで、お便りが大変遅れてしまってごめんなさい。先生がどんどんレッスンを入れてくださるので、とても忙しいのです。私の先生であるイーゴリ・オイストラッフ先生はロシア人です。彼のお父さまは著名なヴァイオリニストでダヴィッド・オイストラッフというクラッシクファンなら誰でも知っている超有名人です。イーゴリ先生も父上に負けず劣らずの名人で、レッスンのときには、思わず聞きほれてしまうことが多いです。その先生が、1995年に日本にいらしたときに、私の演奏を聞いてくださって、その翌年の10月からベルギーの王立音楽院で教えるので来ないかと誘ってくださり、急に留学が決まりました。というわけで、予定より1年早く、1996年秋からブリュッセルに住んでいるのですが、最初の1年は3ヵ月おきぐらいに日本で演奏会があり帰国していましたので落ち着きませんでした。これからの1年は、じっくり腰を落ち着けて、さまざまな面で勉強していきたいと思っています。

11月17日(火曜日)
秋から冬にかけて、こちらはカキやムール貝、野禽類の季節です。カキはやはり生で食べます。ムールは生もおいしいですが、こちらでは、ムールのワイン蒸し“Moules au Vin Blanc”がとてもポピュラーです。バケツ一杯のムールが運ばれてくるので、最初見たときは圧倒されてしまいましたが、今では舌なめずりして待ち構えるといった具合です。これに必ずフリットがついてきます(フリットというのはフライドポテトのことで、ベルギーでは、ケチャップではなくてマヨネーズをつけて食べるんですよ!町のあちこちに、フリット屋さんの屋台(?)が出ていて、みんなおやつに買って食べています)。私の家から徒歩3分のところにおいしいムールを出すお店を発見しました。この冬は通うこ とになってしまいそうです。

さて、こちらでは市の条例で、楽器の音が出せるのは夜10時までと決まっているので、それ以降はインターネットを見たり、メールを送ったりしています。私は日本にいたとき、自他ともに認める芸能界通だったので、こちらに来て寂しい思いをしていたのですが、今ではAOLのおかげで、石橋貴明&鈴木保奈美や松方弘樹情報もバッチリ把握しています。 メールも、母親に送ったり、アメリカやハンガリーの友だちとやりとりしています。電話やFAXのときよりひんぱんに近況報告しています。でも、なんせビギナーなので、ダウンロードの仕方がいまいちわからず、友だちの送ってくれたファイルが見られなかったり、突然画面がウンともスンともいわなくなってしまったりすることもありますが、めげずに格闘する毎日です。 明日からしばらくモンペリエに行くことになり、留守にします。今回はパソコンを持って行かないので、帰りましたらまた連絡しますね。
それでは、また。

礒 絵里子

 

VOL2 パソコンを始めたパリの友人もナント・・・
 

1月8日(金曜日)

明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
年末に、先月号の「HOME PC2月号」が届いたので、さっそく「礒 絵里子のブリュッセル便り」のページを開きました。自分の書いた文章が、そっくりそのまま載っていたので、驚いてしまいました。とてもうれしかったのですが、こうして本になってみると、あそこをもっとああ書けばよかった、こう書けばよかった・・・・・・などとちょっと反省したりもします。
さて私は、年末から年始にかけて、オーストリアのウィーンとハンガリーのブダペストに遊びに行って来ました。学生時代の友だちに会うのが主な目的の旅行で、とても楽しかったのですが、ブリュッセルと比べてなんと10度以上も寒いのです。油断して防寒グッズを持っていかなかった私には辛い旅になりました。

ウィーンもブダペストもニューイヤーコンサートがあり、行ってみたいと思っていたのですが、どちらもソールドアウトもしくは高いチケット(日本円にして5万円相当!)しかなく、あきらめざるを得ませんでした。くわしい人に言わせれば、ニューイヤーコンサートのチケットがその場で買えるわけがないそうで、行きたい人はあらゆるコネを使ってかなり前からチケットを求めるとのことです。日本でクラシックのチケットを手に入れることがそこまで大変という話はあまり聞いたことがないので、ビックリすると同時にうらやましくも思いました。クラシックも聴きはじめるとなかなか良いものなので、興味のないという方も、ぜひ一度チャレンジしてみてください。
そして一昨日はフランスのパリに日帰りで行って来ました。ブリュッセル−パリをTGV(こちらの新幹線)が、なんと1時間半で走っています。ブリュッセルとパリは別の国なのに、ビックリですね。これもまた、友だちに会いに行ったのですが、なんとその友人もパソコンを始めていて、しかもAOLを使っていたのです。さらにショックだったことは、友人はパソコン歴1ヵ月なのに、ブラインドタッチがとても早かったことです。さてはそうとう練習したのでしょう。
私は、最近すっかり練習をサボっていたので、反省しました。良いライバルができたので、負けないようにがんばろうと思います。
それではまたメールしますね。

礒 絵里子

 

VOL3  “何でもふたつ”のブリュッセルでは「You've got Mail」の字幕も!
 

2月4日(木曜日)

今日は、私が今留学している国、ベルギーについてご紹介しましょう。
ベルギーは九州よりやや小さい面積で、オランダ、フランス、ドイツに囲まれた王国です。この小さな国の中にフラマンとワロンというふたつの民族が生活をしています。フラマン人はオランダ語の方言であるフラマン語を話し、ワロン人はフランス語を話しています。ベルギーにちょうど横半分の位置で線を引いたオランダ側の上半分がフラマン語圏、フランス側の下半分がフランス語圏、そしてドイツに面したところでは、少数ですがドイツ語を話す人たちがいます。そして首都ブリュッセルはフラマン語圏に位置してるのですが、両方が公用語なのです。こんな小さな国なのに、このような複雑な文化圏があるなんて、みなさんはご存じでしたか?私は自分が留学するまで、まったく知りませんでした!
街中の駅名、広告、標識などはすべてフラマン語、フランス語の両方の言語で表記されています。最初はとまどいました。なぜって「Arts-loi」と「Kunst-wet」は同じ駅なのですから!何でもふたつのブリュッセルは学校もふたつです。そうです、私の学んでいる「ブリュッセル王立音楽院」もふたつあるのです。ワロンは「Royal Conservatoire」フラマンは「Koninklijk Conservatorium」で、まったく違う学校です。

学長さんも違いますし、教授陣ももちろん違いますが、同じ場所にあり住所は一緒なので、留学しようと資料を取り寄せたときには何がなんだか訳がわかりませんでした。ちなみに私が通っているのはフラマンのほうです。では私もフラマン語を喋っているのかというと、ありがたいことにフラマン語圏の人は英語がペラペラ。そのうえ、ブリュッセルのフラマン人はフランス語も話せるし、フラマン語はドイツ語にも似ているのでドイツ語もできる人が多いのです。誰でも複数の言語が操れるなんて、日本では考えられない話ですよね。EUの本部がここにあるのも納得・・・・・・なのです。

さてさて、先日私は映画を見に行きました。今話題の(日本でもそうですか?)「You've got Mail」です。
主役のふたりの演技はさすがにうまくて、英語のアヤシイ私でもとても楽しめました。先ほどから書いているので、もうおわかりと思いますが、当然字幕も両方出ています。両言語ともできないのに、ついつい字幕を目で追ってしまう私。それより英語に集中したほうがいいのに・・・・・・。日本で洋画を見ていたときの習性は、なかなか直らないみたいです。 You've got Mailみたいなステキなことが起こらないかと思っている私なのですが、私のパソコンに内蔵されているモデムは海外用ではないらしく、とてもひんぱんに切れてしまいます。今、海外用のモデム到着待ちで、インターネットはちょっと自粛中。次回お便りするまでには手に入っていると思うので、そうしたらいろいろご報告できると思います。
それではまた。

礒 絵里子

 

VOL4 演奏の機会が多くなる春パソコンの勉強が・・・・・・
 

3月11日(木曜日)

お元気ですか?私は、自分はとても元気なのですが、パソコンのほうの調子が悪 く、AOLに接続できなくなってしまい、2週間ほどメールもインターネットもできずにいました。先日、こちらのパソコンに詳しい方に直してもらって、またこうしてメールが送れるようになりました。つい半年前までは自分がパソコンを持つなんて考えたこともなかったのに、いざ使えないとなるととても不便ですね。改めてパソコンのありがたみもわかったところで、もっと使いこなせるように勉強するぞ!と言いたいところなのですが、2月から4月にかけて、演奏をする機会が何回かあり、そうもいかない状態なのです。
ヴァイオリンって何をそんなに練習するの?パソコンの時間くらい取れるだろう・・・・・・と思われる方もいらっしゃるかと勝手に解釈し、どんな練習をするのか紹介してみたいと思います。
新しい曲を練習していく場合、まず譜面を読んでどのように弾くかを考えます(簡単に言えば起承転結を考えたり、この音は大切なのでどんなヴィブラートをかけようか、などなど)。ヴィブラートとは弦を押さえる左指を細かく振動させることにより、音を揺らす弦楽器の重要な技術です。それから楽器を持って、弾く練習。弦楽器はピアノなどの鍵盤楽器と違い、自分で音程を作る楽器です。ギターのようにフレットも付いていないので、自分の耳が頼りです。音程は1ミリずれても大きく変わってしまうので、とても細かい作業になります。この音程を作る作業は、脳をほどよく刺激しているらしく、弦楽器奏者はボケる人がとても少ないそうです。

左手だけでなく右手も良い音が出せるように練習しなくてはなりません。ヴァイオリンには弦が4本張ってありますが、左指の押さえてる弦に右手が、というか弓がいなくてはなりません(こんな説明でわかりますか?)。そして譜面が頭の中に入り、すべてが自然にできるようになるまで練習を続けます。 弦楽器はいろいろな楽器の中でも、最も完成された楽器と言われています。なぜなら、たとえばピアノは長く音を伸ばすことができません。鍵盤をたたいたら、その音は消えていってしまいます。弦楽器は弓を弾くことによって音が消えずに持続できるし、小さい音からクレッシェンド(だんだん大きく)することもできます。もちろんピアノにはピアノの長所がたくさんありますが。やはり楽器のことを文字だけで説明するのって難しい!実は、こちらの日本人会で年に一度「クラシックを楽しむ会」というものを開催していて、毎回テーマを決めてレクチャー付きのコンサートをしているのです 。今年のテーマは『弦楽器について』です。お話付きのコンサートというのは普段クラシック音楽を聞きなれていない方にも楽しんでいただけるようです。
あさってがそのコンサートなので、いらしてくださる方にクラシックって良いなあと思っていただけるような演奏ができたらと思っています。
それではまた。

礒 絵里子

 

VOL5 春の訪れを告げる“パック”休暇にベルギービールでちょっと息抜き
 

4月5日(月曜日)

今、音楽院は復活祭の休暇中です。この時期、街中のチョコレート屋さんのウィンドウには、美しくラッピングされた、たまご形のチョコレートが並びます。日本では桜の開花とともに春が来るように、こちらではパックと呼ばれるイエス・キリストの復活を記念する祭日が、春の訪れを告げてくれます。春分の日後の満月の次に来る日曜日がそれにあたりますが、前後の数日が休日となる学校が多いようです。
私が住んでいるところは、ちょっと歩けば高級ショッピング街という、東京でいえば銀座や青山のようなところなのですが、パックが近づくと、どのお店も飾りつけが色とりどり賑やかになります。パックのときには、きれいにカラーリングした卵を贈り合う習慣がありますが、チョコレートで有名なベルギーですから、たまご形チョコとなるわけです。

さて、休暇中でのんびりしているかというと、そうでもありません。今月中旬にオランダでリサイタルがあるので、その練習に追われています。聴衆のみなさんに心から喜んでいただくためにも、日ごろの練習は欠かせません。そこで練習後の息抜きですが、私の場合はもっぱらおいしいものの探求です。最近ハマっているのはチーズです。ゴルゴンゾーラというブルーチーズの一種や、パルメザンチーズをうすーく切ってサラダに入れるとgoodです。そしてこれに合うのがベルギービールなのです。

みなさん、ベルギービールは経験済みですか?最近は日本でもベルギービールを飲めるお店があるみたいですね(AOLで『ベルギービール』を検索すると、いろいろな情報が載っていますよ)。ベルギービールの特徴はなんといってもその種類の多彩さで、その数なんと400種類以上!発酵の仕方で高温で発酵させるエール(ALE)、自然発酵のランビック(LAMBIC)、低温で長期間貯蔵して作るラガー(LAGER)の3種類に分けられるそうです。エールの代表はトラピスト派の修道院で作られるトラピストビールや白ビール。トラピストビールはアルコール度数の高いもの、苦みの強いものが多いようです。白ビールは薄く白っぽくにごっていて、レモンを入れて飲む、夏向きのビールです。ランビックは古いホップを使い、樽で3年以上寝かせたビールのことでややワインに似た味です。ランビックの一種であるクリークは、生のサクランボや木イチゴ、桃、イチゴをつけ込んだもの。これはなかなかお薦めです。とくにイチゴがおいしいです。甘いビールなんて、と顔をそむけそうなあなたもぜひ一度お試しください(そして、本当にだまされたと思ったらごめんなさい。でも私は好きです)。ラガーは、みなさんおなじみのいわゆる産業ビールです。そしてベルギーにはCarbonades Flamandes(フランドル風カルボナード)というビールで牛肉を煮込んだ名物料理があります。これは相当長時間煮込んでいるようで、言われないとビールで煮たとはわかりません。なかなかおいしいです。これはきっと日本のビールでもOKだと思うので、時間のあるときにでも一度作ってみてはいかがでしょうか。なんでもトライの精神が大事ですよね。そうは思いませんか?私はあまりアルコールに強いほうではないのですが、本場のワインやビールは、文化の違いを理解するうえでも飲んでしかるべしとの使命感に基づいて、努力しているのであります。
それではまた。

礒 絵里子

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