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ブリュッセル便りBACK NUMBER/6〜10

VOL 10 この夏、がんばったごほうび◆スペインの別荘でちょっと遅いサマーバカンス
VOL 9 まるでボヘミアン!?夏の音楽会や講習会に大荷物を持ってヨーロッパ中を大移動!
VOL 8 美食の国ベルギーでダイオキシン騒動◆スーパーから食べ物が消えた!
VOL 7 ステキな旅の思い出は代え難い財産◆心も体もリフレッシュしたストラスフォードの旅
VOL 6 歴史を感じさせる建築物の数々・・・◆好きな場所“グランプラス”で中世を思う
   
VOL6  歴史を感じさせる建築物の数々・・・ 大好きな場所“グランプラス”で中世を思う
 

4月28日(水曜日)

AOLで桜前線の移動を見て、春爛漫の日本を懐かしく、そしてうらやましく思っています。きっと今ごろは若葉がきれいなころでしょうか。日本に比べ、ブリュッセルはまだまだ寒い日が続いています。とくに最近、また寒くなりました。一時はもう春はすぐそこ、という感じだったのですが、先日など、4月も終わろうかというのに、雪が降ったんですよ!
それでも、スーパーマーケットや朝市で見る野菜や果物の種類は一段と多くなりました。5月の旬の野菜というと、こちらでは白アスパラが代表的です。私は、日本ではグリーンアスパラしか食べたことがなく、白アスパラというとあの缶詰のふにゃふにゃしたものを想像して敬遠していたのですが、去年初めて買ってみたら、とてもおいしくてビックリ。緑のものに比べると、もう少し柔らかくて、少し苦みがあるのですが、この苦みが最高なのです!こちらの人はクリームソースやオリーブオイルをたっぷりかけるようですが、私はマヨネーズやドレッシング、そして何もかけないでポリポリ食べるのが好きです。

いつもいつも食べ物の話というのも何なので、私の大好きな場所のひとつ、グランプラスの話をしましょう。グランプラスとはその名もズバリ、大きな広場という意味で、市庁舎をはじめとする中世の重要な建物がまわりを囲んでいる方形広場です。フランボワイアン・ゴシック様式で造られた豪華なHotel de Ville(市庁舎)は私がこちらに来たばかりの2年8ヵ月前には積年の汚れで真っ黒でした。その後ずっとまわりを足場で覆われ、外観の汚れを落とす作業が続けられていたのですが、ある日行ってみると、そびえたつ市庁舎の鐘楼が夕日に染まり、黄金色に輝いたその姿の美しかったこと!ここに来ると、ヨーロッパの人にとって、いかに広場が大切なものかが実感できます。

この広場に面して、ほかにパン市場として1515年に建てられ、今は私立博物館として使われている王の家やブラバン公の居館をはじめとするさまざまなギルドの家があります。この一角に、ひと気のない夕刻に立つと、中世の衣装をまとった貴族や騎士団の姿や堅牢な石畳を、コツコツ鳴らして走り去る馬車が目に浮かぶようです。こちらに住んで、歴史的なインスピレーションが瞬時に起こるのはなぜだろうと考えると、やはり建築物が何百年の単位で変化がないことが、その要因なのでしょう。日本でも京都や奈良へ行くと、千年の歴史の重みを感じますよね。こうしてインターネットで世界中の人々とリアルタイムで交信ができる便利な世の中ですが、古いままでいてほしいものもたくさんあるような気がします。

さて、このグランプラスの近辺には、レース屋さんやチョコレート屋さんが軒を連ねています。先月、ベルギービールの話をしましたが、日本で有名なのはビールよりチョコレートでしょうね。王室御用達のメリー、ゴディバ、コトドール、ガレー、私の家の近くにもあるノイハウス、レオニダス、新しい商法でホームページを開設しているニルヴァーナ、音楽院の近くにあるヴィッタメールなどなど、私も順番に試していますが、どれもみんな本当においしいです。ベルギー人のチョコレートの年間消費量から計算すると、1個約15gのプラリネチョコだと、国民全員が2日に3つを消費することになるそうですが、私のチョコ消費量はベルギー人のそれを上回ってしまいそうな勢いです。結局また食べ物の話になってしまいましたが、私がチョコ太りして日本に帰る羽目にならないように祈っててください。

礒 絵里子

 

VOL7 ステキな旅の思い出は代え難い財産 心も体もリフレッシュしたストラスフォードの旅
 

5月31日(月曜日)

ホテル探しは、AOLにかぎります。写真付きで宣伝しているところが多いし、気に入ったらすぐにメールで予約することもできます。本当に便利なのです。
突然こんなことを書いたのは、4月から5月にかけて、旅行の多い1ヵ月だったからです。その宿探しにAOLは大活躍でした。 まず、4月22日から2週間ほどスペインに滞在していました。これはバルセロナで行われた第45回マリア・カナルス国際コンクールデュオ部門に参加するためだったのですが、おかげさまで第3位に入賞することができました。ファイナルの行われたコンサートホールは、サグラダファミリアで有名なアントニオ・ガウディと同世代の建築家、ドメネイ・イ・モンタネールの手によるものでモデルニスモ(アールヌーヴォー)の建物です。スペインのモデルニスモはベルギーのアールヌーヴォーとは違い、スペインの風土が生み出したといいますか、斬新な色づかい、細かな彫刻の数々に圧倒されました。日本も最近は良いホールが続々と登場していますが、雰囲気のあるホールは、やはりヨーロッパに多くあります。コンクールだったので観光はほとんどできなかったのですが、サグラダファミリア、カサ・ミラなどのガウディ建築は見に行きました。
さすがに“スゴイ”のひと言です。圧倒されるものがありました。

コンクールも終わってブリュッセルに戻ってから、少しのんびりしたいなあと思い、前から一度行ってみたかったシェイクスピアの生まれた町ストラスフォード・アポン・エイボンを訪ねました。16世紀のイギリス人は、今よりずっと小柄だったらしく、生家もおとぎの国の家のようでかわいらしく、シェイクスピアの父親や奥さんのことなどが詳しくわかって、とても興味深い旅でした。ブリュッセル−ロンドン間はユーロスターが2時間半で結んでいます(ユーロスターの予約もインターネットでできます)。

ロンドンから60キロのところにあるニューベリーという森の中の町に滞在し、そこからさらに車で2時間半ほど車で走ってストラスフォードに行ったのですが、その間の田舎道が最高でした。見わたすかぎりの平野に若草色の原っぱ(もしかして畑だったのかも)。 そのまましばらく走ると、一面の菜の花畑が真黄色にゆれているのです。また2、30分走ると中世からの石造りの町並みが教会を中心に開け、その後また緑と黄色のパッチワーク。その繰り返しなのです。わーキレイ!と絶叫しながらのドライブとなりました。心が洗われるというのはまさにこういうことなのかと実感できる旅でした。ブリュッセルの住まいは都心部で、もちろん便利で、勉強にもとても適しているのですが、たまにはこんな田舎で過ごすこともリフレッシュするよい機会だなと思いました。

滞在していた(といっても2泊ですが)マナーハウスも広大な敷地を持ち、朝は狩猟の音で目覚めるようなところでしたが、小鳥たちの鳴き声も音楽の原点を教えてくれるような気がしました。コンクールの賞金もバルセロナで気に入ったドレスがあったので買ってしまったり、この旅行で使ってなくなってしまいましたが、もっと大きなものが私の財産になったような気がします。みなさんもインターネットでいろいろ調べて、自分の旅を計画してみてはいかがでしょうか。失敗はあってもきっと忘れられない旅になることと思います。
それではまた。

礒 絵里子

 

VOL8 美食の国ベルギーでダイオキシン騒動 スーパーから食べ物が消えた!
 

7月3日(土曜日)

ある日突然、スーパーマーケットから鶏肉と卵が消えました。これがダイオキシン騒動の始まりでした。続いて牛肉も豚肉もなくなり、卵を利用していると思しき製品、たとえばクッキーやケーキなどのお菓子類もなくなり、なんだか東欧のスーパーのような具合になってしまったのです。美食の国といわれるベルギーの危機!一大事です。
ことの発端は、国内の養鶏所から出荷された鶏肉の脂身から高濃度のダイオキシンが検出され、飼料業者が逮捕されたこと。その後、汚染の報告を受けておきながら放置していた保健相が4月に解任、結局その後の総選挙でも、現政権が情報開示の遅れを非難されて敗北し、総辞職にまで発展しました。

4月に政府が情報を得て、5月28日にこのことが発表されるまで、何も知らない私たちは、卵もお肉もどんどん食べていたのです。たまには親子丼でも、と思ってダブルで食べてしまったことすらあるのです。それも、ダイオキシン入りの食品は1月15日から出回っているというのですから、おなかにどのくらい蓄積されているのやら、考えただけでもオソロシイ・・・・・・。
なにごとにつけ、知る権利が侵されては困ります。ベルギー畜産品の不買運動などの影響で、この汚染による被害総額は1000億円にもなるとか。いずれは露見する失敗は早めに公にして、その解決策を模索するのが最善ではないかと思います。血液製剤の汚染問題にしてもそうでしたよね。
今は情報が大きな意味をもつ時代です。AOLで「ダイオキシン」を検索してみたら、恐ろしや、環境ホルモンの主な種類、として出てきます。生物の内分泌機能に影響を及ぼす化学物質であり、簡単にいうと、環境中に放出された化学物質が体の中に入り、われわれがもつホルモンと同じような働きをしたり、ホルモンの働きをジャマしたりするのが、環境ホルモンなのだそうです。一応、今は検査の結果、肉類、卵とも大丈夫とのことですが、こわくていまだ口にできず、毎日の献立に頭を悩ませる毎日です(食いしん坊の私が、毎日魚と野菜とご飯!!)。

またまた検索して、いろいろ見ていたところ、ダイオキシンを体外に排出するのには、食物繊維や葉緑素が有効であることが、動物実験で実証されているそうです。すでに汚染されていたであろう食品を口にしてしまった私は、緑黄食野菜(食物繊維も葉緑素も入ってます)を大いに食べているので、ケガの功名でダイエットになるかもしれません。
とはいえ、この1ヵ月というもの、「何を食べてる?」というのがあいさつ代わりになっていたブリュッセル。あさってから講習会と演奏会で、オランダやスイス、オーストリアに行くので、内心ホッとしています。ああ、お肉が食べたいなぁ〜!

礒 絵里子

 

VOL9 まるでボヘミアン!?夏の音楽会や講習会に大荷物を持ってヨーロッパ中を大移動!
 

8月2日(月曜日)

今年の夏はパソコンに触れる時間が極端に少なく、私の知識欲が満たされない日々でした。というのも、7月初めから、ボヘミアンとなってヨーロッパ内を移動していたからです。どこに行くにも、まずヴァイオリン。このケースが、またけっこう重いのです。そしてスーツケース。譜面がたくさん入っていて、これまたヘビー級の重さ。パソコンを持ち歩きたいのはやまやまですが、私のノートパソコンはかなり大きめのもので、非力の私にはちょっとつらい。今度日本に帰ったら、もっと軽くて小さいのを買うぞ!と誓いを新たにしました。
まずはオランダのアムステルダムから電車で30分ほどのところにあるアルクマールでの音楽講習会。ここでは1週間、練習と音楽に浸っていました。ちょっとドライブすると昔ながらの風車がのどかに回り、田園風景が広がっています。去年は、寮の食事がちょっといただけなかったのですが、今年はおいしくなっていて、助かりました。ベルギーのダイオキシン騒ぎで、美味探求に意欲を持ってやってきたので、本当によかった。1ヵ月ぶりにお肉を食べました。

次に、スイスのモンブランとシャモニーの山間の町ヴェルビエの音楽祭。大荷物を抱えてまずはジュネーブへ。ここから電車に乗り、2時間でマルティグニーという町に着き、そこからまた登山電車とバスを乗り継いで、ようやくヴェルビエにたどり着くことができました。事前にAOLで、ヴェルビエ音楽祭のホームページを調べてあったのですが、なかなか遠い町でした。こんなときにマイカーさえあったらなあ、と嘆息しました。観客は、スイスばかりでなく、イタリアやフランスから、バカンスとして車で音楽祭に来るのです。苦労してやってくるだけのことはある、すばらしい景観です。ここでは、一流音楽家が集まり、町中で大きな音楽祭が2週間行われました。連日行きたいコンサートがあり、さらに自分のコンサートやレッスンもあり、本当に忙しい毎日でした。
ホームステイ先のおばあさんの家から、まるでアルプスの少女ハイジのように、スキップしながら・・・・・・とはいきませんが、コンサート会場との行き来にエクササイズがたっぷりできました。残念ながら、ペーターには会えませんでしたが・・・・・・。今でも頂上付近は雪が残ってますが、冬場は一面の銀世界になるのでしょう。
スイスはすごい!と思ったのは、各公衆電話に機械がついていて、そこから電話帳検索ができ、FAXやEメールが送れること。ここで、メールにトライ!ちゃんと届いてるか心配でしたが、無事届いていました。

今日1日だけ(というか半日だけ)ブリュッセルに滞在し、またオランダに行きます。アムステルダムのコンセルトヘボウという伝統あるホールでリサイタルをして、講習会に参加します。その後、ザルツブルクでオイストラフ先生のクラスがあります。その後9月にリサイタルがあり、9月末には一時帰国します。
さて、ここで、重大発表です。よく聞いて(見て)ください。私、帰国後、10月16日土曜日午後6時より、御茶ノ水のカザルスホールでリサイタルをします。そのためにも、今練習に励んでいるところです。みなさま、どうぞ聴きにいらしてください。クラシック初心者の方も大歓迎です。決して、後悔はさせません!
それではまた。

礒 絵里子

 

VOL10 この夏、がんばったごほうび スペインの別荘でちょっと遅いサマーバカンス
 

9月3日(金曜日)

先月号でお知らせした,私のボヘミアン状態はまだ続いています。この夏は,ほとんど休み無く演奏会、講習会と良く勉強したぞ、という達成感がありました。そこで、マラソンの有森さんのように、自分で自分を誉めてあげたい気分になった私は、今やっとバカンスに突入しました。王立音楽院で一緒に勉強している親友がミュンヘンの出身で、ザルツブルグの講習会の後、彼女の家に寄り、なんとスペインの別荘に招待されてしまって、ウキウキやってきたというわけです。
ここスペインが、ベルギーやスイスやオーストリアと決定的に違うのは「太陽」です。なんだか、私の出身地、湘南の太陽と似ています。ギラギラとした太陽が、とても近くに感じるのです。飛行機で1時間で、こんなにも違った光景が経験できるのだから不思議です。

ベルギーにも、スペインに別荘を持っている人が多かったのですが、なるほど納得がいきました。日照時間の少ない北ヨーロッパの人々にとって、太陽の国スペインは憧れなのです。みんな、夏は何がナンデモ、バカンスで日焼けして冬に備えるのだ、という意識が強いようです。私は、10月のリサイタル前に、あまり日焼けしてはいけないと思いつつ、何年かぶりにプールで泳ぎました。別荘のプールで泳ぐっていうのを、一度やってみたかったので、満足満足!      

青い空に,白い水しぶきが上がるのを見つめて、幼い頃、お稽古が午前中に終わったら、(つまり,良い子ちゃんだったら)連れて行ってもらえた、江ノ島ヨットハーバーのプールを思い出して、チョッピリ、センチメタルにな気分になりました。いつの間にか、子供ではなくなってしまった私に、ふっと子供心を取り戻させてくれたような気がして…。とはいっても、よくソリティアにハマルっている私は、まだ子供かも。子供の心を持った大人になりたいというのが,私の望ではあるのですが。年を重ねて、様々な経験をして、人の心の痛みが分かる人になって、でも、無垢な心を失わずにいたいというのは、難しいのでしょうか・・…。などと、プカリプカリとプールに浮かんで、曇り無き青空を見つめて、少々哲学的思考をしてみました。なにか、身も心も洗われたように感じましたが、気のせいかしら?

さて、この休暇中に、日本から届いたHOME PC10月号をじっくり見ていました。私がちょっと留守をしている間に、日本の携帯電話&モバイルはものすごい進歩を遂げたようですね。いろいろと研究してから購入せねばと思いました。世界中に持ち運べる軽量ノートPCが欲しい。だって、あっちこっちに飛び回っている間に、AOLのユーガットメール!の声が、何週間も聞けないなんて悲しいから。それとデジカメも、今持っているのは、どうも重くて大きすぎるから、もっとハンディなのを・・・
おっと、こんなとこで、いつまでも遊んでいるわけにはいかないぞ。御仕事、御仕事、というわけで、そろそろブリュッセルに戻り、9月のオランダでのリサイタルに備えて、練習を開始しなくてはいけません。そのあと、先月号でお知らせしたとおり、10月16日に御茶ノ水のカザルスホールでのリサイタルがあるし、とさりげなく(というか明白に)、また宣伝する私です。それでは、また。

礒 絵里子